長谷寺

古くから「花の御寺」と称され、牡丹の名所。有数の観音霊場として知られる。

長谷寺 本堂
Hasedera Temple Main Hall
国宝
 正堂と礼堂で構成される双堂形式の複合仏堂、本瓦葺
 正堂:入母屋造(桁行7間・梁間4間)、一重、正面及び側面裳階付
 礼堂:正面舞台附属の懸造、入母屋造(桁行4間・梁間9間)、一重、妻入
 慶安3年(1650)の再建
 古い形態を残しながら複雑な屋根構造と内部空間をまとめた大建築
長谷寺 本堂
(2012/11/18撮影)

 歴史

時代 内容
奈良時代 『枕草子』や『源氏物語』に登場することから創建は遅くともこの時期と推定される
天文5年(1536) 本堂焼失
天正16年(1588) 豊臣秀長により再興
慶安3年(1650) 徳川家光により再興(大工・中井大和守らが5年の歳月をかけて造営)

 建築

  • 入母屋造平入の正堂に、正面から左右千鳥破風付入母屋造妻入の礼堂大屋根が取り付き、正堂側面に裳階として回り込み、全体として複雑な構成。
  • 正面には舞台を張り出し、礼堂とともに懸造。
  • 軸部は高さや太さの異なる円柱を立て、貫を多用して固め、組物は正堂を出組、礼堂ともこしを三斗組とし、中備に撥束を入れる。
  • 軒は二軒繁垂木、屋根は本瓦葺である。
  • 内陣(桁行5間・梁間4間)を中央にして、東側に宰堂室とその物入、西側に曽我地蔵や位牌堂、集会所を配し、正面に奥行一間余の外陣を通す。
  • 内陣は小組格天井、四半石敷で、内陣東西の部屋は棹縁天井で、集会所と宰堂室を畳敷とする。
  • 内陣はその中心を方二間規模で内々陣に間仕切り、四半石敷とし、切妻形の船底天井を張り、四天王像ほかの絵画や文様を描き、極彩色に飾る。
  • 内々陣正面には一段高く板床を張り、間口三間にわたる須彌壇とする。
  • 外陣は板敷で、中央一間を化粧屋根裏、両脇各二間を小組格天井とする。
  • 外陣西端は玄関等に、東端は小間に間仕切られる。
  • 外陣前面には、相の間を介して礼堂が設けられ、礼堂の正・側面に高欄付の切目縁を廻す。
  • 相の間は化粧屋根裏で四半石敷、礼堂は床を一段高く張り、すべて化粧屋根裏で、相の間側中央の桁行5間に梁間2間を切妻形とする。
  • 平面の一部や柱間装置などに後世の変更が確認できるが、全体としては当初の形態がよく保持されている。
  • 古代以来の観音信仰のもと、本尊を中心とする壮大な空間を作り上げるとともに、正堂と礼堂、相の間からなる複雑な空間構成を巧みな架構・意匠でまとめ上げる。
  • 近世初頭における江戸幕府による大規模な造営になる代表的な寺院本堂であるとともに、観音信仰において中心的な役割を果たした建築として、文化史的意義においても特に高い価値を有している。
【断面図】長谷寺 本堂
断面図
【架構図】長谷寺 本堂
架構図

引用:奈良文化財研究所紀要 2004

 堂内

本尊
重文 十一面観音立像
脇侍
重文 難陀龍王立像 【左脇侍】
重文 赤精童子立像 【右脇侍】

 仏像


十一面観音立像
Standing statue of Juichimenkannon
需要文化財
長谷寺本堂 十一面観音立像

(引用:新版 古寺巡礼奈良2 「長谷寺」 淡交社)

  • 室町時代 天文7年(1538)、仏師・運宗らが造立
  • 像高:1022.5cm、木造漆箔
  • 近江国高島(滋賀県高島市)より来た霊木でもって、仏師・稽文会と稽主勲が3日間で造立
  • 天平5年(733)、行基が開眼したとされる。
  • 現在は、数材の巨木は矧ぎ寄せ、井桁状にした角材を架けてそれらを支える寄木造
  • 頭上正面に化仏の阿弥陀如来像を頂き、次の10面の変化面を置く。
    • 菩薩面2面
    • 忿怒面3面
    • 牙上出面3面
    • 大笑面1面
    • 仏頂面1面
  • 右手には数珠をかけて錫杖(しゃくじょう)を持ち、左手には水瓶を持って方形の大磐石に立つ姿は「長谷寺式」と称される。
  • 全国に広がる長谷観音信仰の中心となる根本像である。


赤精童子立像
Standing Statue of Sekishou Douji
重要文化財
長谷寺本堂 赤精童子立像

(引用:新版 古寺巡礼奈良2『長谷寺』淡交社)


  • 像高:164.9cm
  • 木造彩色、檜の寄木造
  • 室町時代 天文7年(1538)
  • 大仏師・運宗らの作
  • 金剛赤精善神雨宝童子の名称から雨宝童子とも呼ぶ。
  • 初瀬山を守る八大童子の一人で、密跡神として大磐石を守護し、観音の使者となる。
  • 天照大神の姿とも言われる。


難陀龍王立像
Standing statue of the Dragon King Nanda
重要文化財
長谷寺本堂 難陀龍王立像

(引用:新版 古寺巡礼奈良2『長谷寺』淡交社)


  • 像高:199.0cm
  • 木造彩色、檜の寄木造
  • 鎌倉時代 正和5年(1316)
  • 大仏師・舜慶の作
  • 八大龍王の一人で、須弥山世界の南閻浮洲(なんえんぶしゅう)にある無熱地から来て大磐石と国土を守る。
  • 春日明神とも称す。
  • 唐服を着して、荷葉座に立つ。
  • 明応4年(1536)と天文5年(1536)の2度の焼失を免れた。

 関連リンク

長谷寺 公式サイト

 案内

住所

  • 桜井市初瀬731―1

交通

  • 長谷寺駅 ~ 徒歩15分

拝観 詳細

  • 時間 8:30~17:00(10~3月 9:00~16:30)
  • 料金 500円 宗宝蔵は別途100円