法隆寺

7世紀創建、古代寺院の姿を現在に伝える仏教施設。聖徳太子ゆかりの寺院としても知られる。

法隆寺 金堂
Horyuji Temple Kondo Hall
国宝
 入母屋造(桁行5間・梁間4間)・二重仏殿
 本瓦葺・裳階板葺
 飛鳥時代(白鳳期)の建立
 木造建築として世界最古
法隆寺 金堂
(2013/10/06撮影)

 歴史

時代 内容
660年代 若草伽藍とは別の仏堂として建立。
天智9年(670)以降 若草伽藍の火災後、西院伽藍の中心(金堂)となる。
昭和24年(1949) 金堂から出火し、壁画を焼損する。
昭和42年(1967) 焼損した金堂壁画再現事業が発願される。
昭和46年(1971) 金堂小壁画再現事業が完成。

 建築

  • 外観2層(内部は1層)で下層には裳階を付ける。
  • 軒を支える組物は雲形組物、上層には卍崩しの高欄をめぐらすなど斑鳩地域の7世紀独特の様式を示す。
  • 雲形組物には線彫りを表すなど特に古様を示す。
【正面図】法隆寺金堂
正面図
【側面図】法隆寺金堂
側面図
【桁行断面図】
桁行断面図
【梁行断面図】
梁行断面図

引用:図解 社寺建築[社寺図例/編] 理工学社

 堂内

本尊
国宝 釈迦三尊像
諸尊
国宝 薬師如来像
重文 阿弥陀三尊像
国宝 毘沙門天立像
国宝 吉祥天立像
国宝 四天王立像
  • 内部の母屋部分には須弥壇(仏壇)が築かれる。
  • 天井から方形の天蓋が柱間に合わせて、東・中・西の3ヶ所から吊るされる。
  • 東の間に薬師如来像、中の間には釈迦三尊像、西の間には阿弥陀如来像を安置。
  • 外陣の壁面には阿弥陀浄土や薬師浄土が描かれ、内陣の頭貫上には飛天を描いた小壁がある。
  • 四隅に四天王像を安置する。
【内部平面図】法隆寺金堂
内部平面図

 仏像


釈迦三尊像
Statues of Shakyamuni triads
国宝
法隆寺金堂 釈迦三尊像

(引用:新版 古寺巡礼奈良1『法隆寺』淡交社)

  • 銅造鍍金
  • 中尊:釈迦如来坐像(像高:87.5cm)
  • 左脇侍:薬王菩薩立像(像高:92.3cm)
  • 右脇侍:薬上菩薩立像(像高:93.9cm)
  • 止利仏師の作
  • 飛鳥時代(推古31年)
  • 釈迦如来像は、右手に施無畏印、左手に施与(与願)印をとる諸仏に通相の姿で結跏趺坐する。
  • 面長な顔に杏仁(きょうにん)形の目、口角を上げた表情から不思議な微笑(アルカイックスマイル)
  • 衣は幾何学的な襞を形成し、台座にかかる懸裳は裾を左右に大きく張り出すなど左右対称性が強い
  • 厳格で神秘的な雰囲気があり、飛鳥様式の代表的作例


薬師如来坐像
Sitting Statue of Bhaisajyaguru
国宝
法隆寺金堂 薬師如来坐像

(引用:新版 古寺巡礼奈良1『法隆寺』淡交社)


  • 銅造鍍金 像高:68.3cm
  • 金堂東の間の本尊
  • 飛鳥時代(白鳳期)
  • 金堂中の間の釈迦如来坐像に似た造形を示す
    ⇒ 表情は柔和、両膝に丸み、衣の表現も台座にかかる懸裳の裾の左右へ張り出しが弱いなど、全体的に釈迦如来坐像の厳格さが薄まっている印象。


阿弥陀三尊像
Statues of Amida triads
重要文化財
法隆寺金堂 阿弥陀三尊像

(引用:新版 古寺巡礼奈良1『法隆寺』淡交社)


  • 中尊:阿弥陀如来坐像(像高:64.6cm 銅造鍍金)
  • 左脇侍:観音菩薩立像(像高:55.4cm 銅造鍍金)
  • 右脇侍:勢至菩薩立像(像高:55.2cm 銅造)
  • 光背の銘文から承徳年間(1097~1098)に盗難に遭い、鎌倉時代・貞永元年(1232)に康勝(運慶の四男)が新たに制作
  • 右脇侍・勢至菩薩立像は、幕末から明治に行方不明となり、現在はフランス・ギメ美術館所蔵となっている。
  • 現在、金堂に安置されている右脇侍は平成6年(1994)の制作のレプリカ


毘沙門天・吉祥天立像
Standing Statue of Bishamonten and Kichijoten
国宝
法隆寺金堂 毘沙門天立像
毘沙門天立像
法隆寺金堂 吉祥天立像
吉祥天立像
(引用:新版 古寺巡礼奈良1『法隆寺』淡交社)

  • 木造 彩色切金
  • 像高:毘沙門天123.2cm・吉祥天116.7cm
  • 金堂中の間の釈迦三尊像の左右に安置される。
  • 承暦2年(1078)に造立。
  • 釈迦三尊像とともに吉祥悔過会の本尊そされる。
  • 毘沙門天の控えめな体の動きや肉付け、吉祥天の柔和な表情に典型的な平安時代後期の典雅な様式をみることができる。
  • 表面には金箔を細く切って文様を表す切金を交えた彩色が鮮やかに残る。


四天王立像
Standing statues of Shitenno
国宝
法隆寺金堂 四天王立像(持国天)
持国天立像
法隆寺金堂 四天王立像(増長天)
増長天立像
法隆寺金堂 四天王立像(広目天)
広目天立像
法隆寺金堂 四天王立像(多聞天)
多聞天立像
(引用:新版 古寺巡礼奈良1『法隆寺』淡交社)

  • 木造 彩色切金
  • 像高:持国天133.3cm、増長天134.3cm、広目天133.3cm、多聞天134.2cm
  • 須弥壇の四隅に安置される。
    (東南:持国天、西南:増長天、西北:広目天、東北:多聞天)
  • 飛鳥時代
  • いずれも眉根を寄せ、甲冑を着け、手に武器をとり、邪鬼の上に直立する謹厳な姿。
  • 直立する動きのない姿勢が特徴(後世の四天王像は体を大きく動かし、仏敵に備える体勢をとる)
  • 両腕から垂下する天衣の下端が後ろから前に翻るのは飛鳥様式には見られない奥行き方向の表現であり、新しい様式展開を看取することができる。
  • 樟材製で金箔を細かく切って文様を表す切金を交えた彩色が施される。

 壁画


内陣旧壁画
Naijin Wall-painting
重要文化財
法隆寺金堂 内陣旧壁画(飛天図) 法隆寺金堂 内陣旧壁画(飛天図)
(引用:『法隆寺』法隆寺発行)

  • 土壁彩色(縦71.5㎝・横135.2㎝)
  • 金堂内陣頭貫上に飛天図が20面描かれる
  • 20面とも同じ図様で、一つの原図を写して描いたと考えられる
  • 2体の天人が散華のための花皿を持って天衣をなびかせながら飛来する様子を描く
  • 張りのある輪郭線や隈取りの強い官能的な身体表現は外陣内壁の阿弥陀浄土図などと同様
  • 昭和24年(1949)の火災は、取り外されていたので難を逃れている


外陣旧壁画
Gejin Wall-painting
重要文化財
法隆寺金堂 外陣旧壁画1号壁
1号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画2号壁
2号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画3号壁
3号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画4号壁
4号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画5号壁
5号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画6号壁
6号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画7号壁
7号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画8号壁
8号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画9号壁
9号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画10号壁
10号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画11号壁
11号壁
法隆寺金堂 外陣旧壁画12号壁
12号壁
(引用:『法隆寺』法隆寺発行)

  • 外陣の内壁に大小12面の壁画が描かれていた
  • 釈迦、阿弥陀、弥勒、薬師の各浄土を描いたとされる4面の大壁と菩薩像を描いた8面の小壁
  • 6号壁の阿弥陀浄土図(中央に阿弥陀如来、左右に観音・勢至菩薩、上方には天蓋)が代表的
  • 鉄線描とよばれる肥痩のない輪郭線や強い隈取り、肉体の抑揚を明確にあらわす描法が特徴
  • 7世紀後半に伝えられた初唐の充実した絵画様式を基本としている
位置 名称 解説
1号壁 大壁 著色釈迦浄土図
  • 東側の大壁
  • 中尊は紅衣をまとい、印相は説法印で釈迦の特徴が顕著
  • 左右に脇侍菩薩2、羅漢10、上部に円い天蓋と飛天2を描く
2号壁 小壁 著色菩薩像
  • 左手に紅蓮華を持つ半跏像
  • 5号壁の像と一対をなす日光菩薩と推定
  • 10号壁の薬師の脇侍
3号壁 小壁 著色観音菩薩像
  • 宝冠に化仏があるので観音像
4号壁 小壁 著色勢至菩薩像
  • 宝冠に水瓶を付けているから勢至像
5号壁 小壁 著色菩薩像
  • 2号壁と対をなす月光菩薩と推定
  • 10号壁の薬師の脇侍
6号壁 大壁 著色阿弥陀浄土図
  • 西側の大壁
  • 阿弥陀三尊と20余の小さな新生菩薩を現す
  • 中尊は説法印を結ぶが、説法印の阿弥陀は奈良時代に多い
  • 脇侍菩薩は向かって右が宝冠に化仏を付けた観音、左は宝瓶を付けた勢至
7号壁 小壁 著色観音菩薩像
  • 観音の通常の姿、聖観音と推定
  • 3号壁の観音像と似ている
8号壁 小壁 著色文殊菩薩像
  • 詳細は不明
  • 対をなす11号壁が普賢菩薩であることから、普賢に対する文殊であると推定
9号壁 大壁 著色弥勒浄土図
  • 北側西寄りの大壁
  • 剥落が多く、不明瞭な部分が多い
  • 中尊の他、脇侍菩薩2、神王形2(梵天・帝釈天の説あり)、四神4、金剛力士2、羅漢2
  • 前方に獅子、天蓋の両側に飛天を描く
10号壁 大壁 著色薬師浄土図
  • 北側東寄りの大壁
  • 本来は東側にくるべきであるが、南方釈迦が東に回ったので、この位置になったと推測される
  • 中尊は両脚を垂下し、左手に宝珠様の持物(薬師の瑠璃宝珠と推定)が確認される
  • 脇侍を含む菩薩4、羅漢2、神将6が左右対称的に描かれ、下方に獅子、天蓋の左右は飛天を配す
11号壁 小壁 著色普賢菩薩像
  • 騎象の普賢菩薩で観普賢経などに説かれている来儀像
12号壁 小壁 著色十一面観音菩薩像
  • 頭上の十一面
  • 7号壁の聖観音と対をなし、これらが相対として描かれたことは観音信仰の盛況を示す

 

 関連リンク

法隆寺 公式サイト

 案内

住所

  • 生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1

交通 詳細

  • 法隆寺駅 ~ バス「法隆寺門前」行終点 ~ 徒歩1分

拝観 詳細

  • 時間 8:00~17:00
  • 料金 西院伽藍、大宝蔵院・百済観音堂、夢殿 共通で 1,200円