東大寺

「大仏さん」の寺として、古代から現代に至るまで広い信仰を集め、日本の文化に多大な影響を与えてきた。

世界文化遺産(古都奈良の文化財)
[平成10年(1998)登録]

国指定史跡

 基本

  • 南都七大寺
  • 山号 : なし
  • 院号 : なし
  • 宗派 : 華厳宗大本山
  • 開基 : 聖武天皇
  • 国家の安寧と国民の幸福を祈る道場。仏教の教理を研究し、学僧を養成するための各研究所が設けられた八宗兼学の学問寺。

[解説]八宗兼学

 本尊

  • 盧舎那仏(大仏殿)

 札所

  • 法然上人二十五霊跡 11番(指図堂)
  • 大和北部八十八ヶ所霊場 12番(真言院)

 所在地

  • 平城京の東、三笠山の麓
  • 奈良公園エリアの北に位置する

東大寺 位置図

境内案内図 (引用:公式サイト

 歴史

創建期 奈良時代
時期 内容
神亀5年(728) 聖武天皇が早世した皇太子の基親王(もといのみこ)の菩提を弔うために金鍾寺(きんしょうじ)を建立。
金鍾とは「黄金の瓶」のこと。聖武天皇が『華厳経』に見える故事にちなんで命名。この「鍾」の字が平安時代には「鐘」と書かれるようになる。
天平13年(741) 国分寺・国分尼寺建立の詔が発せられ、金鍾寺は大和国の国分寺となり、『金光明寺(きんこうみょうじ)』と称す。
このように国家鎮護の官寺となったこの寺院を前身としているので、東大寺は『金光明四天王護国之寺』ともいう。
天平15年(743) 聖武天皇は盧舎那大仏造顕の詔を発し、紫香楽宮の甲賀寺に大仏鋳造の骨柱を建て始めたが山火事の頻発や地震の続発などで頓挫 ⇒ 平城京に還ることを決意
天平17年(745) 大仏の鋳造を再開
天平勝宝4年(752) 南インドの僧・菩提僊那(ぼだいせんな)を導師に「大仏開眼供養会」を盛大に厳修
天平勝宝6年(754) 鑑真和上が大仏殿の前に設けられた戒壇で聖武上皇はじめ440余りに授戒 ⇒ 名実ともに国家寺院としての体裁が整う。
造東大寺司が廃止される延暦8年(789)まで、講堂、東西両塔、三面僧房などの諸堂の造営が続行された
聖武天皇は大仏の造立にあたって、広く国民に「一枝の草、ひとつかみの土」の助援を呼びかけ、皇室や政府の事業のみならず、国民の助力に完成させようとした。
大仏鋳造と伽藍造営は国家組織の造東大寺司が担ったが、行基のまとめる大衆の歓進によるところも大きかった。
このいわゆる大衆を協力者として造立を果たそうとした精神は各時代の再建や修理にあたって、現代に至るまで常に相承されてきている。
再建期 平安~鎌倉時代
時期 内容
斉衡2年(855) 盧舎那仏の頭部が地震で落ちたのを始めとして、天平建築の講堂、三面僧房、西塔などが焼失、南大門や大鐘楼は倒壊
治承4年(1180) 平重衡による南都焼討ちにより法華堂・二月堂・正倉院などの一部堂宇を除いた伽藍の大半が焼失
翌年には、造東大寺大勧進に任命された俊乗房・重源によって復興事業に着手 ⇒ 鎌倉幕府(特に源頼朝)の全面協力を得て再建
文治元年(1185) 後白河法皇を導師として「大仏開眼供養」を行う
文治2年(1186) 周防国が東大寺造営料所に当てられてから復興事業は着々と進む
建久6年(1195) 「大仏殿落慶供養」が営まれ、東塔も13世紀前半に完成
再興期 江戸時代
時期 内容
永禄10年(1567) 松永と三好の兵乱がおよんで、二月堂や法華堂、西大門や転害門、正倉院や鐘楼など僅かな建物を残して大仏殿、回廊、講堂、三面僧房、食堂、八幡宮、東塔、戒壇院、大湯屋、上院閼伽井屋、東南院、尊勝院、真言院などの主要伽藍が焼け落ちる。
その後、約120年間 蘆舎那大仏は雨ざらしとなる・・・
17世紀後半 江戸時代の元禄期に公慶上人が幕府の許可を得て、全国勧進行脚
元禄5年(1692) 「大仏開眼供養」が営まれる
18世紀後半 中門、東西廻廊、東西楽門、両脇侍などの巨像も造立され、現存の寺観が整う

 伽藍

東大式伽藍配置
東大寺式伽藍配置
東大寺式伽藍配置
  • 南面回廊の南方に塔を2基配置する形式の伽藍は、平城遷都に伴って藤原京から遷された大安寺から確認されている。
  • その後の年代に建立された東大寺や西大寺、法華寺、秋篠寺、當麻寺などで同じ形式の伽藍となっている。
現在

東大寺境内 位置図
名称 建立時期 詳細
金堂(大仏殿) 江戸(正徳4年) click
南大門 鎌倉(正治元年)
中門 江戸(正徳4年)
廻廊 江戸(正徳6~元文2年)
法華堂(三月堂) 正堂:奈良(天平19年頃)
礼堂:鎌倉(正治元年)
法華堂経庫 平安(元禄移設)
法華堂手水屋 室町(建武2年)
法華堂北門 鎌倉(延応2年)
二月堂 江戸(寛文2年)
二月堂参籠所 鎌倉(建治3~弘安5年)
二月堂閼伽井屋 鎌倉後期
二月堂仏餉屋 鎌倉後期
二月堂湯屋 江戸(寛文年間)
三昧堂(四月堂) 江戸(延宝9年)
戒壇院戒壇堂 江戸(享保17年)
開山堂 鎌倉(建長2年)
鐘楼 鎌倉(承元年間)
念仏堂 鎌倉(嘉禎3年)
大湯屋 室町(応永15年)
勧進所経庫 江戸(貞享3年移設)
真言院潅頂堂 江戸(慶安2年)
本坊経庫 江戸(正徳4年移設)
転害門 奈良(天平宝字年間)

 国宝

  • 建造物
  • 絵画
  • 彫刻
  • 工芸品
  • 書跡・典籍
  • 古文書・資料
名称 適用 詳細
金堂(大仏殿) click
南大門
法華堂(三月堂)
二月堂
鐘楼
開山堂
本坊経庫
転害門
名称 適用 詳細
紙本着色華厳五十五所絵巻
絹本著色倶舎曼荼羅図
名称 適用 詳細
銅造蘆舎那仏坐像 金堂(大仏殿) click
木造金剛力士立像2軀 南大門
乾漆不空羂索観音立像 法華堂(三月堂)
塑造日光仏・月光仏立像2軀 法華堂(三月堂)
乾漆梵天・帝釈天立像2軀 法華堂(三月堂)
乾漆四天王立像4軀 法華堂(三月堂)
乾漆金剛力士立像2軀 法華堂(三月堂)
塑造執金剛神立像 法華堂(三月堂)
塑造四天王立像4軀 戒壇堂
僧形八幡神坐像 勧進所八幡殿
木造良弁僧正坐像 開山堂
木造重源上人坐像 俊乗堂
銅造誕生釈迦仏立像および銅造灌仏盤
塑造日光菩薩・月光菩薩立像 東大寺ミュージアム
木造弥勒仏坐像
名称 適用 詳細
金銅鉢 2口
孔雀文磬
鉦鼓 長承三年銘
鉦鼓 建久九年銘
附 錫平文鉦架、撞木、蓮実形柄杓、菩提子念珠
鉄釣燈籠 2基 法華堂
鉄湯船 建久年銘 大湯屋
鉄鑰 鍵付(附:鉄鍵4本)
堂司鈴 弘安八年銘
銅香水杓 4枝 夫々建長五年、建長七年、文永四年、□□元年銘
銅水瓶 2口(うち1口嘉元三年銘)
銅鉢(金銅受台付)・金銅受台
鰐口
梵鐘 文永元年銘 真言院
梵鐘 徳治三年銘 二月堂食堂
雲鳳戧金経櫃
朱漆布薩盥 3口(うち2口応永三十四年銘)
黒漆鼓胴 2口
黒漆螺鈿卓
彩絵鼓胴
彩絵鼓胴 寛喜四年修理銘
五獅子如意(伝聖宝所持)
玳瑁如意
二月堂練行衆盤 11枚(うち10枚永仁六年銘)
木製黒漆油壺 2口 元徳二年銘
木造西大門勅額
石燈籠 建長六年銘 法華堂前
名称 適用 詳細
賢愚経 巻第十五(四百六十七行)
名称 適用 詳細
東大寺文書100巻(979通)、8,516通
東大寺金堂鎮壇具 一括

 重要文化財

  • 建造物
  • 絵画
  • 彫刻
  • 工芸品
  • 書跡・典籍
  • 古文書・資料
名称 適用 詳細
中門
東西回廊
法華堂経庫
法華堂手水屋
法華堂北門
二月堂閼伽井屋(若狭井屋)
二月堂参籠所
二月堂仏餉屋(御供所)
三昧堂(四月堂)
東西楽門
念仏堂
大湯屋
勧進所経庫
石造五輪塔 奈良市川上町所在
名称 適用 詳細
絹本著色嘉祥大師像・絹本著色浄影大師像
絹本著色華厳海会善知識曼荼羅図
絹本著色華厳五十五所絵 10面
絹本著色香象大師像
絹本著色十一面観音像
絹本著色四聖御影(建長本)・(永和本)
紙本著色東大寺大仏縁起 芝琳賢筆 3巻
名称 適用 詳細
木造如意輪観音・虚空蔵菩薩坐像 金堂(大仏殿)
石造獅子一双 南大門
木造阿弥陀如来立像 俊乗堂
木造愛染明王坐像 俊乗堂
木造地蔵菩薩坐像 念仏堂
塑造弁才天・吉祥天立像 東大寺ミュージアム
木造不動明王二童子像 東大寺ミュージアム
木造地蔵菩薩坐像 東大寺ミュージアム
木造天蓋3面 法華堂
木造訶梨帝母坐像 二月堂参籠所食堂
木造千手観音立像 東大寺ミュージアム
木造阿弥陀如来坐像 三昧堂
木造公慶上人坐像 公慶堂
木造五劫思惟阿弥陀坐像 勧進所阿弥陀堂
銅造釈迦・多宝如来坐像 戒壇院
厨子入木造千手観音・四天王立像
附:旧厨子後板及扉 7面
戒壇院千手堂
木造鑑真和上坐像 戒壇院千手堂
木造愛染明王坐像 戒壇院千手堂
木造菩薩立像 中性院
木造地蔵菩薩立像 真言院
木造四天王立像(新禅院伝来)
附:像内納入品
真言院
厨子入木造地蔵菩薩立像 知足院
木造釈迦如来坐像
附:像内納入品(紙本墨釈迦如来造立願文(覚澄筆)1巻、紙本墨書宝篋印陀羅尼等 1巻、紙本墨書華巌経 巻四十 1巻、舎利香木 1包)
奈良国立博物館寄託
木造阿弥陀如来坐像 勧進所
木造聖観音立像
木造十一面観音立像 三昧堂
木造地蔵菩薩立像 公慶堂
木造持国天立像
附:像内納入品(木札 1枚、版本金剛般若波羅蜜経 1巻、版本仁王護国般若波羅蜜経 2巻)
木造多聞天立像
木造十二神将立像 天皇殿
銅造舟形光背(二月堂本尊光背
木造青面金剛立像
木造閻魔王坐像・木造泰山府君坐像
銅造如意輪観音半跏像(菩薩半跏像)
木造伎楽面29面・乾漆伎楽面1面(附木造伎楽面残欠5片(4面分)、乾漆伎楽面残欠7片(3面分))
木造舞楽面9面(皇仁帝4、散手、貴徳、陵王、納曽利2)
木造伎楽面2面
木造行道面(蝿払)2面
木造菩薩面3面(附 残欠4片)
木造獅子頭
名称 適用 詳細
金銅鉢 2口
孔雀文磬
鉦鼓 長承三年銘
鉦鼓 建久九年銘
附 錫平文鉦架、撞木、蓮実形柄杓、菩提子念珠
鉄釣燈籠 2基 法華堂
鉄湯船 建久年銘 大湯屋
鉄鑰 鍵付(附:鉄鍵4本)
堂司鈴 弘安八年銘
銅香水杓 4枝 夫々建長五年、建長七年、文永四年、□□元年銘
銅水瓶 2口(うち1口嘉元三年銘)
銅鉢(金銅受台付)・金銅受台
鰐口
梵鐘 文永元年銘 真言院
梵鐘 徳治三年銘 二月堂食堂
雲鳳戧金経櫃
朱漆布薩盥 3口(うち2口応永三十四年銘)
黒漆鼓胴 2口
黒漆螺鈿卓
彩絵鼓胴
彩絵鼓胴 寛喜四年修理銘
五獅子如意(伝聖宝所持)
玳瑁如意
二月堂練行衆盤 11枚(うち10枚永仁六年銘)
木製黒漆油壺 2口 元徳二年銘
木造西大門勅額
石燈籠 建長六年銘 法華堂前
名称 適用 詳細
東大寺聖教 1,806点
華厳経 巻第一、第四、第五、第六、第九、第十一 6巻
願文集 寛元三年宗性跋
虚空蔵経 自巻第一至巻第八8巻
附 同経 巻第六(首欠)1巻
金光明最勝王経註釈 巻第五、第九
金剛般若経讃述 巻上(白点本)承和十一年延厳書写
高僧伝六種 宗性筆
(日本高僧伝要文抄3冊、日本高僧伝指示抄1冊、大宋高僧伝要文抄2冊、大宋高僧伝指示抄1冊、名僧伝要文抄1冊、名僧伝指示抄1冊)
高麗版華厳経随疏演義鈔 40巻
紺紙金字華厳経 80巻
紺紙銀字華厳経残巻(二月堂焼経)20巻
細字金光明最勝王経 自巻第六至巻第十 1巻
続華厳略経疏刊定記 巻第二、第九上下、第十三上下 5巻
大威徳陀羅尼経 自巻第一至巻第十(天平十二年五月一日光明皇后願経)10巻
附 経帙 1枚
大般涅槃経 自巻第一至巻第四十 40巻
大毘婆沙論 巻第廿三(天平十二年五月一日光明皇后願経)
大方等大集菩薩念仏三昧経 自巻第一至巻第十 10巻
附 経帙1枚、経籤1箇
百法顕幽抄 巻第一末(朱点本)会昌三年書写
法華統略 巻上
弥沙塞羯磨本
瑜伽師地論 巻第十二、第十三、第十四、第十七(天平十二年五月一日光明皇后願経)4巻
羯磨 2巻
新修浄土往生伝 巻下 保元三年弁昭書写奥書
円照上人行状記 凝然筆 3巻 正安四年奥書
東大寺凝然撰述章疏類 自筆本(九種)146巻
東大寺宗性筆聖教并抄録本(二百十四種)99巻、347冊
東大寺要録 10冊
東大寺要録続録 9冊
賢劫経紙本墨書巻物 所在不明
名称 適用 詳細
栄西自筆唐墨筆献上状
越前国田使解(桑原庄券第二、第三)2巻
元久二年重源上人勧進状
阿弥陀悔過料資財帳
周防国阿弥陀寺領田畠注文 正治二年十一月日重源加判
宣旨 延暦二十四年九月二十四日菅野眞道自署・太政官宣旨 延暦二十四年二月二十五日菅野眞道自署
僧某逆修願文案 貞慶筆 建久九年四月十五日
東大寺大勧進僧行勇自筆書状 九月十六日 年預五師宛
東大寺奴婢見来帳 天平勝宝三年
二月堂修二会記録文書 293冊、2,107通(附 手継箱 3合)
東大寺戒壇院指図

 年間行事

伝統行事
時期 名称 適用 詳細
1/1 初詣 大仏殿・二月堂
1/7 修正会 大仏殿
2/3 節分 二月堂
2/20 修二会 別火 戒壇院
3/1~15 修二会 本行 二月堂
4/8 仏生会 大仏殿
4/12 公慶上人坐像特別開扉 勧進所公慶堂
5/2 聖武天皇祭 大仏殿・天皇殿
7/5 俊乗忌 俊乗堂
7/28 解除会 大仏殿
8/7 大仏お身拭 大仏殿
8/9 功徳日(およく) 二月堂
8/15 灯籠供養会 大仏殿
9/17 お十七夜 二月堂
10/5 転害会 勧進所八幡殿
10/15 大仏さま秋のまつり 大仏殿
12/14 仏名会 二月堂
12/16 良弁忌 開山堂・法華堂
12/31~1/1 除夜の鐘 鐘楼

 参考リンク

東大寺 公式サイト

 案内

住所

  • 奈良市雑司町406-1

交通 詳細

  • 近鉄奈良駅 ~ 徒歩20分

拝観 詳細

  • 時間 8:30~16:00(季節により異なる)
  • 料金 大仏殿・法華堂・戒壇堂 各500円

 関連ページ

  • 御朱印
  • 写真
  • 金堂(大仏殿)

鏡池と鹿

中門の東南には鏡池があり
周辺を数多くの鹿が散策しています。
奈良を象徴する一つの風景です。

廬舎那仏

奈良のシンボルのような存在です。
このアングルの方が正面からの撮影より
その大きさがわかるような気がします。

二月堂の小路

二月堂前の風情のある小路です。
写生をしたり、写真を撮ったりしている人が
結構います。