橘寺

垂仁天皇の命により不老不死の果物を取りに行った田道間守が持ち帰った橘の実を植えたことに由来する寺。聖徳太子誕生の地。

橘寺
(2013/09/21撮影)
Tachibana-dera Temple
国指定史跡
 正式名称:上宮皇院菩提寺
 元治元年(1864)再建
 聖徳太子建立七大寺の一つ「橘尼寺」と伝承

 基本

  • 山号 : 佛頭山
  • 院号 : なし
  • 宗派 : 天台宗
  • 開基 : [伝]聖徳太子

 本尊

  • 聖徳太子

 札所

  • 新西国三十三箇所霊場 10番
  • 聖徳太子霊跡 8番

 所在地

  • 飛鳥川の西岸、飛鳥の盆地の南端、仏頭山の北麓に位置する。
橘寺 位置図
橘寺 位置図
 

 歴史

時代 内容
敏達元年(572) 聖徳太子が誕生(当時、この地は橘宮)。
推古14年(606) 推古天皇のために聖徳太子が「勝鬘経(しょうまんぎょう)」を講讃しているときに、庭に蓮の花が1mも積もったり、南の山に光明を放つ千の仏頭が現れたり、太子の冠から日月星の光が輝くなど不思議な出来事が相次いだので、仏堂建立を命じたとされる。
欽明天皇の離宮を聖徳太子が改修して、橘樹寺(たちばなのきのてら)としたのが始まりとされるが、実際の創建年代は不明。
天武9年(680) 当時の尼坊十房が焼失。
奈良時代 伽藍の整備が進む。
平安時代 寺勢は衰える。
久安4年(1148) 雷火で五重塔を焼失。
鎌倉時代 太子信仰の盛隆とともに復興する。
永正3年(1506) 多武峯の僧徒によって放火され、講堂だけ残る。
元治元年(1864)から明治 再興、現在の寺観になる。

 伽藍

四天王寺式伽藍配置
四天王寺式伽藍配置
  • 昭和28年(1953)からの発掘調査により、中門、塔、金堂、講堂が東西に一直線に並ぶ四天王寺式伽藍配置と推定。
  • のちに金堂の背後で回廊が閉じていることが確認されたため、山田寺式伽藍配置の可能性がある。
橘寺 発掘遺構
橘寺 発掘遺構
(現地案内板から抜粋)
現在
  • 東門から本堂(太子堂)に続く参道を挟んで、北に本坊・観音堂、南に塔跡・経堂・蓮華塚が並んでいる。
橘寺 境内図
橘寺 境内図

名称 建立時期 詳細
本堂(太子殿)
観音堂
護摩堂
経堂
西門
東門
鐘楼
往生院
本坊
新西国三十三箇所霊場 10番
観音堂 本尊:如意輪観音
聖徳太子霊跡 8番
本堂 本尊:聖徳太子


本堂(太子殿)
Main Hall
講堂跡に建つ

(2012/10/07撮影)

  • 元治元年(1864)再建。


黒駒像
Kuro-no-koma
太子の愛馬
橘寺 黒の駒
(2017/03/19撮影)

  • 本堂(太子殿)の右前にある太子の愛馬の像。
  • 空を駆け、達磨大師の化身といわれる。
  • 仏頭山麓の地蔵菩薩の傍らにその姿をとどめ、災難厄除のお守りになっている。


蓮華塚
Rengezuka
別名・畝割塚
橘寺 蓮華塚
(2017/03/19撮影)

  • 勝鬘経講讃の時に降った蓮華を埋めたところ。
  • 大化の改新で面積の基準(一畝)として田畑を整理したので、畝割塚とも呼ばれる。
  • 一畝:当時36坪(現在30坪)、約100㎡強


観音堂
Kannon-do Hall
回廊跡に建つ
橘寺 観音堂
(2017/03/19撮影)

  • 本尊は如意輪観音坐像
  • 境内で出土した飛鳥時代から鎌倉時代にかけての瓦も展示。


三光石
Sankoseki
勝鬘経講讃の逸話の残る石
橘寺 三光石
(2017/03/19撮影)

  • 観音堂の右側に位置する。
  • 勝鬘経講讃時に聖徳太子の冠から出た日・月・星の光が集まり輝いたと伝わる。


五重塔跡
Site of five-story pagoda
珍しい形をした心礎
橘寺 五重塔跡
(2017/03/19撮影)

  • 本坊の前に土壇がある。
  • 直径約90cm、深さ10cmの柱の入る孔、その円孔の三方に半円形の孔(そえ柱孔)が掘ってある。
  • 現存すれば約38mの五重塔が建っていたと推定される。


二面石
Double-faced Stone
飛鳥時代の石造物
橘寺 二面石(善相)
善相 (2017/03/19撮影)
逆三角形で、目が突出し、団子鼻で口元を丸く作る。
橘寺 二面石(悪相)
悪相 (2017/03/19撮影)
奥目で口をとがらせ、左頬を膨らませる。
  • 飛鳥時代の石造物 高さ1mほど
  • 通称飛鳥石と呼ばれる石英閃緑岩(花崗岩)を加工したもの
  • 石の表裏にそれぞれ人面の彫刻が施される
  • 「善悪二業一心所造」を表現したものとされる
  • 北側が善相、南側が悪相
  • 人面の裏面を垂直の平坦面に整えて他の構造物と組み合うように工夫している
  • 一石に二面の彫刻は猿石の特徴と共通する
  • 本来はどこにあったか不明であり、近世になって橘寺に持ち込まれたといわれている


阿字池
Ajigaike
梵字「あ」を形取った池
橘寺 阿字池
(2017/03/19撮影)

  • 聖徳太子が作らせたと伝わる池
 
 


鐘楼
Shoro
五重塔跡付近に建つ

(2012/10/07撮影)


護摩堂
Gomado
不動明王を祀る
橘寺 護摩堂
(2017/03/19撮影)


西門
West gate
西側の山門
橘寺 西門
(2017/03/19撮影)

 重要文化財

絵画
名称 適用 詳細
絹本著色太子絵伝 8幅 奈良国立博物館委託
彫刻
名称 適用 詳細
木造日羅立像 収蔵庫(聖倉殿)
木造聖徳太子坐像(勝鬘経講讃像) 本堂(太子殿)
木造如意輪観音坐像 観音堂
木造地蔵菩薩立像 収蔵庫(聖倉殿)
工芸品
名称 適用 詳細
鼉太鼓縁 収蔵庫(聖倉殿)
石灯籠 収蔵庫

 堂内

本尊
重文 木造聖徳太子坐像(勝鬘経講讃像)
諸尊
  木造聖徳太子孝養像
  木造田道間守像

 寺宝


聖徳太子坐像(勝鬘経講讃像)
Seated statue of Shotokutaishi
重要文化財
橘寺 聖徳太子坐像(勝鬘経講讃像)
(引用:古寺巡礼9 「聖徳太子の寺を歩く」JTBパブリッシング)

  • 木造 彩色
  • 聖徳太子35歳の時に、勝鬘経を講讃した姿
  • 本堂(太子殿)に安置される本尊


日羅上人立像
Standing statue of Nichira-Jonin
重要文化財
橘寺 日羅上人立像
(引用:月刊大和路 ならら 2014.11月号)

  • 木造 彩色 像高:144.6cm
  • 檜材 一木造
  • 頭体部から六角の蓮華座まで共木で彫り出す
  • 両手首から先は別材の後補
  • 地蔵菩薩像として造立されたと推測
  • 右手を垂下して開き、左手は屈臂して宝珠を捧持し、腰を軽く左にひねり右脚を遊脚する。
  • 体部の厚い肉付や力強い衣の襞の表現が平安時代前期の作例と共通する。


如意輪観音坐像
Seated Statue of Nyoirin Kannon
重要文化財
橘寺 観音堂 如意輪観音坐像
(2017/03/19撮影)

  • 木造
  • 平安時代後期の作
  • 観音堂の本尊

 案内

住所

  • 高市郡明日香村橘532

交通

  • 橿原神宮前駅 or 飛鳥駅 ~ 明日香周遊バス:「岡橋本」or「川原」下車~徒歩3分

拝観

  • 時間 9:00~17:00
  • 料金 350円