［解説］組物

くみもの
  • 屋根の重量を受け、下の柱に伝達する構造材。
  • 中国名は「斗栱（ときょう）」。中国の漢代に発明され、宮殿建築の部材として発展、仏教寺院や道観（道教の施設）にも応用。
  • 日本へは6世紀後半、仏教建築として伝来。当初は寺院建築に使用が限定。
  • 平安時代後期に、その装飾性から神社本殿にも使用されるようになる。
  • 主要な構成部材は「斗（枡や桝とも書く）」と「肘木」。
    1. 斗：直方体の下部を斜めに曲面でしゃくり取ったもの。四角いので日本では米を量る升の形を表す「ます」と呼ばれた。
    2. 肘木：短い棒状の部材で、下端の船の底のような緩やかな曲面に削ったもの
  • 形状から多くの種類に分かれる。主なものは以下のとおり。
    1. 舟肘木
    2. 大斗肘木
    3. 大斗絵様肘木
    4. 平三斗
    5. 出三斗
    6. 出組（一手先）
    7. 二手先
    8. 三手先
舟肘木（ふなひじき）
  • 柱上に舟肘木をのせて、直ちに桁を受ける最も簡単な構造
  • 中国から伝来したものではなく、日本において奈良時代に創始されたと推定。
舟肘木
大斗肘木（だいとひじき）
  • 舟肘木の下に大斗を加えた。
  • 実例は少ない。
  • 江戸時代になると肘木の表面に渦巻きなどの装飾彫刻を施した絵様肘木（雲文を彫ったものは雲肘木と称された）を大斗肘木に応用した大斗絵様肘木が出現する。
大斗
三斗組（みつとぐみ）
  • 柱上に大斗肘木をのせ、肘木上に巻斗を3個並べて桁を受ける組物。
    ⇒　桁方向だけに設ける場合を平三斗。
    ⇒　大斗の上に肘木を十文字（枠肘木）に組んで、桁と平行・直角の両方に斗を組む場合を出三斗。
  • 平三斗の肘木と直交して虹梁（社寺建築で使用される装飾的な梁）が大斗上に組み込まれることが多い。
    1. 南北朝時代以前：虹梁の尻を撥形にした鯖尾が平三斗から突き出す
    2. 室町時代以降：鯖尾を拳鼻という唐様の装飾部材に変えるのが一般化
    3. 出三斗は平三斗の改良型、室町時代以降は流造では一般化していった。
平三斗
平三斗
出三斗
出三斗

引用：図解 社寺建築［社寺図例／編］　理工学社