山田寺跡

奇偉荘厳の白鳳寺院の遺構。倒壊したそのままの状態で回廊が出土したことで知られる史跡。

山田寺跡 出土品
Yamada-dera Temple Ruins Excavated Articles
重要文化財
 1,133点
 奈良文化財研究所 飛鳥資料館において保管・展示
 7~11世紀の遺物
 重文指定:平成19年(2007)6月8日
山田寺跡 東面回廊(復元)
(2012/10/27撮影)

 明細

  • 山田寺跡からは、建築部材約2,200点、金属製品1,140点(鉄製品1,069点、銅製品70点、金製品1点、銭貨26点、ガラス製品6点)など12世紀以降の遺物も検出されている
  • 創建期である7世紀から東面回廊が倒壊時期と推定される11世紀末までを対象として指定。
  • 出土建築部材の国指定文化財として例としては静岡県山木遺跡の出土建築部材(重要民俗文化財)があるが、考古資料としては初めて重要文化財に指定された。
名称 員数 内容
回廊部材 92点 復元東面回廊3間分
建築部材 88点
銅板五尊像 1点
銅押出仏 3点
塼仏 39点
灯籠 1基分
金属製品 137点
ガラス小玉 3点
瓦せん類 556点
土器・土製品 106点
木製品 51点
石製品 14点
銭類 15点
木簡 27点

 詳細

建築部材(回廊部材含む)
Building member
山田寺跡 回廊
倒壊したままで発見された東面回廊
(引用:遺跡に学ぶ 085『奇偉壮厳の白鳳寺院 山田寺』新泉社)

[回廊部材]

  • 出土した建築部材は約2,200点であり、内訳は東面回廊が約1,400点、南面回廊が約700点、宝蔵が20点ほど、東面大垣付近10点ほど
  • 倒壊した状態で確認された回廊は、
    • 東面回廊の南半部(南から9~11間が良好)
    • 南面回廊の東端部
  • 良好な状態では、東側柱筋の柱や連子窓、腰壁などがほぼ完存していた。
  • 南から4~6間では、平瓦が葺かれたまま落下したので出土した建築部材の状態は良くなかった。
  • そのままの状態で発見されたことから現存する建物と比較できるほど詳細な情報を得ることができた。
  • 法隆寺の建築様式との比較から、その差異のあるもの中には、中世の大仏様建築に見ることができるものがある。
    ⇒ 鎌倉時代の東大寺復興時に重源が採用した中国直輸入の様式
    ⇒ 大陸的な要素が強かったとも評価できる。

[回廊以外の建築部材]

  • 南面回廊の南東の遺物包含層から古代では他に類例をみない長い肘木が出土しているが、使っていた建物は特定できていない。
  • 宝蔵の部材は、茅負と垂木が残るのみであったが以下のような資料提供となった。
    • 屋根の形式:強い軒反りを持つ入母屋造 or 寄棟造
    • 屋根の四隅に入る隅木が通常は45度方法に入るべきところが、そうなっていない
    • 軒はいずれも角形断面をもつ地垂木と飛檐(ひえん)垂木からなる二軒である
銅板五尊像
Five Statues by chiseling copper-plate
山田寺跡 銅板五尊像
銅板五尊像
(引用:遺跡に学ぶ 085『奇偉壮厳の白鳳寺院 山田寺』新泉社)

  • 縦:37mm、横:45mm、厚さ:平均1.4mm
  • 重さ:23.9g
  • 小さな銅板に仏像を半肉彫りした鋳造鍍金製
  • 宝蔵の基壇から出土
  • 携帯用の仏龕あるいは厨子の納入品と推定される。
  • ひとつの根から伸びる五茎の蓮華座上に、中尊如来像と両脇侍菩薩立像、二比丘立像
  • 上方には、瓔珞を飾った双樹と飛天2体を配す。
  • 下方には。供養者と獅子2体を彫り出している
  • 初唐代の舶来品と推定。
銅製押出仏
Copper pressed buddhist image
山田寺跡 銅製押出仏
銅製押出仏
(引用:遺跡に学ぶ 085『奇偉壮厳の白鳳寺院 山田寺』新泉社)

  • 縦:68mm、横:44mm、厚さ:平均0.3mm
  • 重さ:7.54g
  • 長方形の銅板の周辺に紐状の突帯をめぐらせて、頭上に天蓋を飾り、光背を負って蓮華座上に趺坐する如来坐像
  • 宝蔵南東の遺物包含層から出土
  • 3種5点出土
    ⇒ 他は頭部と胴部の破片で、宝蔵の基壇上および東雨落溝<から出土/li>
灯籠
Garden Lantern
山田寺跡 灯籠の下段火袋
灯籠の下段火袋
(引用:遺跡に学ぶ 085『奇偉壮厳の白鳳寺院 山田寺』新泉社)

  • 火袋と笠の破片が出土
  • 竿と中台、宝珠などの各部分は出土していないため形状は不明
  • 高度な石材加工技術を擁して製作されたもの
  • 火袋は上下2段に分かれ、下段は土台と柱、壁を一石から造り出し、壁面中央下寄りに逆ハート形の猪目を穿っている。
  • 差し渡し57cmの八角形平面で、高さは30cmほどとなる
  • 上段火袋は一石から連子窓の隙間を刳り抜いたもので、八角の各面に連子子を3本ずつ配する
  • 笠の破片は断片のため全体は明確でないが、一石から照りむくり(=S字曲線)のある八角形宝形造の屋根と屋根の頂部から八角の各頂点へ降る隅棟、軒先を造り出し、内部をドームのように凸字形に刳り抜いている
磚仏
Senbutsu
山田寺跡 塼仏
塼仏
(引用:山田寺発掘調査報告書 奈良文化財研究所 2002)

  • 粘土を型につめて成型して焼いたもの。
  • 十二尊連坐、四尊連坐、小形独尊、大型独尊の4種が出土している。
十二尊連坐塼仏
  • 天蓋の下に結跏趺坐する半肉彫りの如来像12体を上下3段、左右4列に並べたもの
  • 復元すると、長さ18.8cm・幅14.3cm・厚さ2.5cm
  • 像容はいずれも同じ:同じ原型を12回押捺して焼成した范型からつくられたと推定
  • 1点のみ、黒漆をかけて金箔を施した2尊分の破片がある。
  • 中央の2尊の4隅に釘穴を設けてあるものが多い。
  • 315点出土、焼損したものも多く、塔跡中心部から多数出土
    ⇒ 塔内部の荘厳に用いられたと推測
四尊連坐塼仏
  • 如来像を上下左右に2段2列に並べたもの
  • 十二尊連坐塼仏より小さく、像の細部まで刻出されていない
  • 固定する釘穴のほか、金箔を貼った痕跡も見られず、十二尊連坐塼仏よりも焼きが甘い
  • 范型の違いで4種に分類され、裏に刻書をもつものがある。
  • 30点出土し、十二尊連坐塼仏と同様の出土状況であるが、金箔を貼った痕跡がなく焼損したものがないことから塔に用いられたものか定かでない。
小形独尊塼仏
  • 後屏の前に結跏趺坐する如来形を半肉彫りしたもの
  • 一辺約3cmの正方形の厚さ7mm程度
  • 16個体分が出土し、火災に見舞われたものがある
  • 塔中心部と金堂南方から出土。
大形独尊塼仏
  • 結跏趺坐した如来形の膝頭部分と思われる破片が6点出土
  • 塔と金堂の間で出土し、基壇上にはないため、使用場所が他型式の塼仏とは異なる可能性がある。

 案内

住所

  • 桜井市山田1258

交通

  • 近鉄/JR・桜井駅~バス(石舞台行)「山田寺前」下車徒歩3分

見学

  • 時間 自由
  • 料金 無料