長谷寺

古くから「花の御寺」と称され、牡丹の名所。有数の観音霊場として知られる。

 基本

  • 初瀬寺、泊瀬寺、豊山寺と言われてきた
  • 山号 : 豊山(ぶざん)
  • 院号 : 神楽院
  • 宗派 : 真言宗豊山派(総本山)
  • 開基 : 道明

大和七福八宝めぐり

 本尊

  • 十一面観音菩薩

 札所

  • 西国三十三箇所霊場 8番
  • 真言宗十八本山 16番

 所在地

  • 奈良盆地の東側、山並に隔てられた、古くから「隠口(こもりく)の泊瀬」と呼ばれた地である。
  • 大和と伊勢を結ぶ初瀬街道を見下ろす初瀬山の中腹に本堂が建つ。
  • 寺域から南東に延びる参道は古き門前町の趣きが漂う。
長谷寺 位置図
長谷寺 位置図
長谷寺 境内図
境内案内図 (引用:長谷寺リーフレット)

 歴史

時期 内容
朱鳥元年(686) 天武天皇の病気平癒を願って、道明上人が西の岡(本長谷寺)に、銅板法華説相図を安置し、三重塔を建立して寺を開いたのが草創とされる。
神亀4年(727) 聖武天皇の勅を奉じて、徳道上人が東の岡に十一面観音立像を祀ったのが現在の長谷寺の始まりとされる。
承和14年(847) 定額寺に加えられて国の援助が得られるようになる。
天慶7年(944) 最初の大火に見舞われる。
⇒ 観音像も焼失するが、「頭上の仏面一体」は焼失を免れたので、これを切り取り。
⇒ 次の観音造立のときに、これを胎内に納めた。
火災に計9回遭う。
平安時代 長谷詣が流行。『更級日記』や『蜻蛉日記』といった日記文のほか、『源氏物語』や『枕草子』などにも描かれ、長谷観音の霊験の高いことが紹介されている。
与喜天満宮との結びつきによって連歌や能楽との関係も強くなり、観世流の祖である観阿弥はその名前を長谷観音のお告げによって名付けられたと伝えられている。
室町時代以降 庶民の間に伊勢信仰が盛んになると、大和から伊勢への道筋にあたることから参詣する人が多くなる。

 伽藍

  • 初瀬山中腹の斜面地に巧みに建てられる。
  • 調和のとれた山岳寺院の伽藍を形成している。
  • 山門から山腹の本堂までは緩やかな登廊の階段が折れ曲がって延びている。
  • 舞台造の本堂からは視界が開け、堂宇の立ち並ぶ広い境内が見下ろせる。

長谷寺境内 位置図
長谷寺境内 位置図
名称 建立時期 詳細
本堂 慶安3年(1650) 詳細ページ
仁王門 明治27年(1894) 詳細ページ
登廊 慶安3年(1650) 詳細ページ
鐘楼(尾上の鐘) 慶安3年(1650) 詳細ページ
繋廊 慶安3年(1650) 詳細ページ
三百余社
宗宝蔵
愛染堂 click
三社権現社 click
大黒堂
開山堂
弘法大師御影堂
本長谷寺 click
一切経堂 click
五重塔 click
三重塔跡 click
本坊 大正13年(1924) 詳細ページ
奥の院
(興教大師祖師堂、陀羅尼堂)
click
能満院
普門院(不動堂)
六角堂
歓喜院
梅心院
慈眼院
月輪院
金蓮院
本願院


一切経堂
Issaikyodo Hall
県指定文化財
長谷寺 一切経堂
(2016/06/19撮影)

  • 宝形造本瓦葺
  • 桁行3間、梁間3間、1重
  • 禅宗様式
  • 元禄4年(1691)、5代将軍綱吉の側用人・牧野越後守成貞による再建とされる。
  • 基壇の上に礎盤という石を置いて柱を立て、花頭窓(かとうまど)や波形の弓欄間を設ける。
  • 内部は、鏡天井で四半敷の床、中央の六角転輪蔵に、寛文7年(1667)水野石見守忠貞寄付の万暦版一切経約2,000冊(宗宝蔵保管)を納める。


五重塔
Five-storey pagoda
戦後日本に初めて建てられた五重塔
長谷寺 五重塔
(2012/10/21撮影)

  • 高さ26.16m(基壇の地表から27m)
  • 3間5重、檜皮葺
  • 昭和29年(1954)に建立
  • 初重内部には極彩色の文様や繧繝(うんげん)彩色の宝相華(ほうそうげ)など外陣四隅の板壁には真言八祖をそれぞれ描き、内陣には金剛界大日如来坐像を安置する。


三社権現社(滝蔵三社)
Three Gongen-sya Shrine
寛文7年(1667)建立
長谷寺 三社権現社(滝蔵三社)
(2012/11/18撮影)

  • 一間社春日造 銅板葺
  • 寛文7年(1667)、大工加右衛門によって造営。
  • 本堂北東の石垣上に建つ。
  • 中殿が瀧蔵権現社(虚空蔵菩薩)、東殿が石蔵権現社(地蔵菩薩)、西殿が新宮権現社(薬師如来)の3棟が横に並んで南面している。
  • 木部に彩色を施し、飾金具は使わず、垂木に反りをもつなど古式を保つ。
  • 毎年2月上旬に綱懸祭が行われる。


愛染堂
Aizen-do
愛染明王を祀る
長谷寺 愛染堂
(2012/10/21撮影)

  • 天正16年(1588)、観海上人が建立。
  • 愛染明王を本尊として祀る。


本長谷寺
Motohase-dera Temple
長谷寺の草創
長谷寺 本長谷寺
(2012/10/21撮影)

  • 天武天皇の勅願により道明上人が造営し、長谷寺の草創であることから「本長谷寺」と称されている。
  • 本尊として、銅板法華説相図を祀り、天武天皇の病気平癒を祈願した。
  • 明治9年(1876)に移築


三重塔跡
Site of three-storey pagoda
秀頼ゆかりの遺構
長谷寺 三重塔跡
(2012/10/21撮影)

  • 慶長年間、豊臣秀頼が再建
  • 明治9年(1876)3月、祝融の災にかかり焼失
  • 現在は礎石のみを残す


奥の院
Oku-no-in(holy of holies)
興教大師を祀る
長谷寺 陀羅尼堂
(2016/06/19撮影)

  • 鎌倉時代に定和上人によって、往生院として開かれる。
  • 豊山派祖専誉の入山後は菩提院と称し、祖師堂と陀羅尼堂が建つ。
  • 祖師堂には、興教大師を祀る。
  • 平成4年(1992)、興教大師850年御遠忌で解体修理、陀羅尼堂を新築。


二本の杉
Futamoto-no-Sugi
謡曲「玉鬘」の舞台
長谷寺 二本の杉
(2012/11/18撮影)

  • 源氏物語 玉鬘(たまかずら)の巻に登場する。
  • 玉鬘は、光源氏と契り生霊にとりつかれて死んだ夕顔の娘。
  • 故あって、玉鬘は筑紫へ身を隠すが母・夕顔に会いたい一心で筑紫から舟で大和に至り、長谷へ祈願に来たところ、夕顔の侍女・右近とこの杉の下で巡り合い、母の死を知る。
  • 謡曲「玉鬘」は、初瀬詣に訪れた旅僧の前に現れた玉鬘の霊がこの僧をこの杉の下に案内し、亡母の侍女・右近と巡り合った話を述べる物語である。
  • 長谷寺の観音信仰は、どんな願いも示現してくれるということで、王朝時代(天皇が実権を握っていた時代:奈良~平安時代)から盛んであったことを物語っている。
 

 国宝

建造物
名称 適用 詳細
本堂 詳細ページ
工芸品
名称 適用 詳細
銅板法華説相図 click
書跡・典籍
名称 適用 詳細
長谷寺装飾経(附:蒔絵経箱)
  • 法華経(28巻)
  • 観普賢経(1巻)
  • 無量義経(3巻)
  • 阿弥陀経(1巻)
  • 般若心経(1巻)
click

 重要文化財

建造物
名称 適用 詳細
仁王門 詳細ページ
登廊
(下登廊、繋屋、中登廊、蔵王堂、上登廊)
詳細ページ
三百余社
鐘楼
繋廊
長谷川本坊
  • 大講堂
  • 大玄関及び庫裏
  • 奥書院
  • 小書院
  • 護摩堂
  • 唐門及び回廊
  • 中雀門
  • 土蔵
詳細ページ
絵画
名称 適用 詳細
絹本著色阿弥陀来迎図
絹本著色浄土曼荼羅図
紙本白描高雄曼荼羅図像
・胎蔵界巻第一、三、四、五
・金剛界巻第一、二
絹本著色地蔵十王像 能満院
絹本著色春日曼荼羅図 能満院
絹本著色十一面観音像 能満院
彫刻
名称 適用 詳細
木造十一面観音立像
附:木造難陀龍王立像及び像内納入品、木造赤精童子立像及び像内納入品
本堂 詳細ページ
銅造十一面観音立像
木造地蔵菩薩立像 地蔵堂
木造不動明王坐像
木造不動明王坐像 不動堂
木造聖観音立像 普門院
工芸品
名称 適用 詳細
金鼓 建久三年銘
三鈷柄剣
赤糸威鎧 大袖付
白糸威鎧 大袖付
鷹羽威鎧 大袖付
三目札鎧(附:脇楯)
藍韋威肩赤大袖
銅錫杖頭 2柄 建長三年銘 大阪市立美術館
黒漆四方殿舎利厨子 能満院
書跡・典籍
名称 適用 詳細
宋版一切経 2,766帖
僻連抄 観応二年(1351年)書写奥書

 寺宝


銅板法華説相図
Bronze plaque hokkesesso-Zu
国宝
  • 銅鋳造
  • 縦:83.3cm、横:75.0cm、厚さ:2.3~3.0cm
  • 長谷寺創建時の遺品
  • 「法華経」見宝塔品に説かれる釈迦説法の奇瑞を表現する。
  • 中央に六角三重の宝塔、塔内上層に舎利容器、中層に多宝仏、下層に釈迦・多宝仏を配する。
  • 下段中央に刻む願文は、玄奘三蔵新訳の「甚希有経(じんけうきょう)」(649年訳出)を引いて造塔の功徳を述べ、銅板の説明と豊山が天竺鷲峯山に比する聖地であることを讃え、僧道明が飛鳥浄御原天皇のために80余人の援助を得て戌年(686?)に敬造した旨を記す。

銅板法華説相図
(引用:新版 古寺巡礼奈良2 「長谷寺」 淡交社)


長谷寺装飾経
Hase-dera Temple Decorative sutras
国宝
  • 彩盞墨書 巻子装
  • 縦:30.6cm、全長:964.8cm(法華経序品第1)
  • 法華経28巻、観普賢経1巻、無量義経3巻、般若心経1巻、阿弥陀経1巻の全34巻。
  • 法華経序品第1と安楽行品第14の見返しに極彩色の絵を描き、軸首に八角水晶や金銅金具を用いる。
  • 料紙には金銀砂子、切箔、霞引き、野毛を蒔き散らし、天地の欄外に桐唐草文などを摺り出し、二重の金界線を引くなど豪華に装飾する。
  • 筆跡は各巻異なり、複数の人が書き写した寄合書。
  • 発願者は不明。寺伝には聖武天皇御寄付、巻1を御宸翰(天皇直筆の文書こと)、第2の27行を光明皇后御宸筆とする。

長谷寺装飾経
(引用:新版 古寺巡礼奈良2 「長谷寺」 淡交社)


丸文散蒔絵経箱
Marumonchirashi Makie(gold lacquer) sutra box
国宝
  • 木製漆塗 合口造
  • 縦:22.1cm、横:34.7cm、高さ:19.5cm
  • 装飾経を納める三段重ねの蒔絵経箱。
  • 蓋の肩を面取りし、蓋と身の縁に錫の置口をめぐらす。
  • 蒔絵の意匠は画面を三分割する片身替りで各所に丸文を散らす。
  • 地の技法は金一色の沃懸地のもの、梨子地、金砂子・切箔・野毛・霞などで、丸文は沃懸地のもの、梨子地のもの、銀金貝(かながい)をそれぞれ地に合わせて巧みに配置する。
  • 伝統的な意匠を受け継ぎつつ、桃山時代の感性を先取りした先駆的な経箱とされている。

丸文散蒔絵経箱
(引用:新版 古寺巡礼奈良2 「長谷寺」 淡交社)

 年間行事

伝統行事
時期 名称 適用 詳細
1/1 本尊開帳法要 本堂
1/1~7 仁王会 本堂
1/1~7 修正会 本堂
1/8~10 仏名会 本堂
1/28~2/3 星まつり 本堂
2/3 節分会・大黒堂法要 本堂
2/8~14 修二会 本堂
2/14 だだおし法要 本堂
2月上旬 三社権現綱懸祭 三社権現社
3/15 涅槃会 本堂
3/18~24 彼岸会 本堂
3/21 弘法大師正御影供 弘法大師御影堂
4/8 釈尊降誕会 本堂
4月中旬~5月上旬 ぼたんまつり 境内一円
5/5 専誉僧正恩徳会 本堂
6月中旬~7月中旬 あじさいまつり 境内一円
7/24 愛宕社祭礼 愛宕社
8/13~15 孟蘭盆会 本堂
9/20~26 彼岸会 本堂
10月上旬~12月上旬 もみじまつり 境内一円
10月第2日曜 与喜天満宮祭礼 与喜天満宮
12/8 成道会 本堂
12/12 陀羅尼会 本堂
12/31 本尊閉帳法要 本堂
花見頃

 関連リンク

長谷寺 公式サイト

 案内

住所

  • 桜井市初瀬731―1

交通

  • 長谷寺駅 ~ 徒歩15分

拝観 詳細

  • 時間 8:30~17:00(10~3月 9:00~16:30)
  • 料金 500円 宗宝蔵は別途100円